有機農業

オーガニックとは、単なるグラスフェッド農法以上のもの

カナダのオーガニックおよびグラスフェッド認証制度の詳細

今日の食料品に流通においては、肉や乳製品のラベルに「グラスフェッド」や「オーガニック」というラベルが表記されることが一般的となっています。非常に多くのオプションが存在し、我々の身体に、お財布に、そして地球にとってどれが最も理にかなっている選択なのか判断するのが難しい現状です。この記事では、カナダのグラスフェッドとオーガニック動物製品および規制に関する主な特徴を説明します。

牛などの反芻動物は草を食べるのに適した身体となっています。ほとんどでないにしても、多くのカナダの農家は、草と穀物を組み合わせて、乳牛や肉牛を飼育しています。しかしながら、この組み合わせは消費者の新たな関心を呼んでおり、慣行農業の典型的な草と穀物の組み合わせを餌にするのでなく、草を餌にする方法で飼育された肉牛や乳牛の要求が高まっています。

グラスフェッド農法は、家畜の食事できるだけ多くの草と飼料で構成することを確証しています。

理想としては、天候が許すときはグラスフェッドの家畜は放牧され、冬の間は保存されていた飼料(乾草)にて飼育されます。飼料ベースの食事、特に放牧は、家畜にとっても消費者にとってもより健康的な選択であり、オーガニック農法の原則に当てはまる部分もあります。グラスフェッド農法とオーガニック農法を組み合わせることにより、環境にやさしく、倫理的に、肉製品や乳製品の生産をすることができます。しかし、グラスフェッドは必ずしもオーガニックと同等ではありませんし、その逆もまた然りです。それぞれの利点を知っておくことが重要です。

認証とはどういうこと?

◆オーガニック認証とは・・・

カナダ有機規格(COS)は、反芻動物の食事に対する草や飼料の取り入れ、農薬、ホルモン*、抗生物質の使用に関する要件を盛り込んだ、家畜生産のためのガイドラインをいくつか定めています。

COSの基準によると、有機農業で育てられる草食家畜は、放シーズン中は放牧地にアクセスでき、気象条件が許せばいつでも外気に触れることができる環境に身を置く必要があります。
これらの基準の下では、1日の乾燥飼料摂取量の少なくとも60%が牧草、飼料またはサイレージから構成されなければなりませんが、グラスフェッドがオーガニック生産の唯一の指標ではありません。
残りの40%の有機農業で飼育される家畜の食事は、遺伝子組み換え組織を含まず、絶え間なく合成農薬を投入されていない有機栽培された飼料を与える必要があります。同様に、非治療的用法や成長促進を目的としたホルモン*や抗生物質の使用は、オーガニック生産では禁止されており、またこれらの物質の医学の一貫としての使用も厳しく制限されています。カナダ有機認証制度(COR)の下では、認証オーガニック家畜は慎重に扱われ、家畜に与える負担を最小限に抑えなければなりません。制度には生活環境、そして断尾や除角などの習慣に関する基準が含まれています。

カナダ食品検査庁(CFIA)の規制に従い、カナダのオーガニックロゴの使用、「オーガニック」と表記された製品を州または国境を越えてには、オーガニック生産者は認定機関による認証を得る必要があります。しかし、生産する地域内でのみ流通する製品に関しては、州の規制(現時点でオンタリオ州では規制なし)を遵守すれば問題ありません。

*(成長ホルモンはカナダの酪農生産事業では許可されていません。また、繁殖ホルモンは乳牛の繁殖周期促進を目的に使用されるかもしれませんが、COSの下では許可されていません。牛肉の飼育に関しては規制が異なります。慣行農業の牛肉生産者は牛を早く肥えさせるため、成長ホルモンを使用するかもしれませんが、COSの下では許可されていません。)

◆グラスフェッド認証とは・・・

グラスフェッドの肉や乳製品を生産することを選択した農家は、草を基調とした食事における草の量については、非常に高い基準を設けているかもしれません。カナダには現在、グラスフェッドに関する要件における州または国の基準がないため、どのような要件にすべきか、さまざまな意見が出ている状況です。

ただし、生産者はアメリカ合衆国農務省(USDA)と協力して、適切なガイドラインを設定する民間団体のアメリカン・グラスフェッド協会(AGA)のように、独立した組織によって認証を受けることができます。AGA規格にはいくつかの有機的な原則も含まれています。たとえば、認証されたグラスフェッドの家畜には、抗生物質や成長ホルモンを投与したり、遺伝子組み換え製品(GMO)を与えたりしてはいけません。合成農薬の使用も禁じられていますが、いくつかの例外があり、総合的かつ持続可能な害虫や雑草の管理がうまくいかなかった場合などには使用が許可されています。
オンタリオ州の酪農協会(DFO)は、最近、暫定のグラスフェッドの基準を発表しました。この基準によると、牛の乾物摂取量の75%は草や飼料で構成される必要があり、その他の禁止されている飼料には追加の制限が課せられています。他のカナダのグラスフェッド基準とは対照的に、DFOは成果ベースでの評価であるため、注目されています。DFOは、収穫前の実施内容のみに焦点を当てるのではなく、最低レベルの共役リノール酸や最大比率のオメガ6脂肪酸、オメガ3脂肪酸など、最終製品に含まれる特定の指標に基づき、グラスフェッド牛乳の認証を行うことを提案しています。DFOは、本基準が全国的なグラスフェッド基準を策定するためのテンプレートとなることを望んでいます。

グラスフェッドとオーガニックが環境に与える影響

オーガニックおよびグラスフェッドによる生産は、一般的に、慣行農業に比べ環境にやさしいと考えられています。そして、どちらの場合も、生産が倫理的に行われ、環境への配慮を念頭に置いて行われるのであれば、環境に優しいと言えるでしょう。

プロサートの規格で概説されているように、グラスフェッド農業は生産者が輪作放牧を通して牧草地を管理していくことを推奨してします。この方法は生物多様性と土壌肥沃度を高め、作物の生産に適していない土地を効率的に利用し、そして水を引いて農地を潤す作業、かんがいの必要性を減らします。

同様に、AGAは、牧草地農業は石油化学製品への依存を減らし、土壌に有機物を加え、温室効果ガスの排出を減らすと主張しています。

オーガニック生産により、周辺の生態系に有害な農薬、肥料、抗生物質の使用量は少なくなります。仮に、オンタリオ州が農地の5%のみをオーガニック生産に転換したら、肥料散布量を2,150万kg、農薬散布量を約148,000kg、飼料中の抗生物質や医薬品量を3,539kgを減らすことができるでしょう。いくつかの研究により、有機農業の土壌は慣行農業の土壌よりも多くの炭素を隔離することが可能であると示されています。

つまり、オーガニック、そしてグラスフェッド農法は、どちらも土壌状態および生物多様性を改善する可能性があります。しかしながら、どちらも粗悪な牧草地管理を防げるものではありません。環境に対する悪影響を減らすことを目指していますが、無責任に実施される可能性があり、改善の余地を残しています。もし消費者が環境を配慮した選択を行いたい場合は、信頼できる認証マークのついた商品を探す、もしくはオーガニックおよびグラスフェッドの規定の両方を遵守する農家や企業との関係を築くことが最良の方法です。さらに、より明瞭・厳格・包括的なグラスフェッドおよびオーガニック基準を推進することで、確実にマーケティングの主張が農業の方法に反映されるようになるでしょう。

実証済みの健康上の利点

多くの研究により、オーガニックおよびグラスフェッド農法はいずれも、健康上の利益があることが示され、その大部分はグラスフェッドミルクおよび肉に含まれる健康的な脂肪量に関連したものでした。2014年、トロント大学は、グラスフェッドミルクには心臓に良い脂肪が含まれていることを示唆し、心臓病や2型糖尿病のリスクの低下につながることを示しました。

『ブリティッシュジャーナル・オブ・ニュートリション』に掲載された、二ューカッスル大学で行われたメタアナリシスのデータによると、オーガニックミルクは、オメガ3脂肪酸の値が50%以上高く、また心臓の状態の改善が期待できる共役リノレン酸、鉄、ビタミンE、カロテノイドの値も高いことが示されました。

『ガーディアン』に掲載されたように、研究者の中には、これらの健康成分の違いの影響は小さく、人間の健康に影響を及ぼすほどではないと主張する人もいます。しかし、肉や乳製品を選ぶ際には、わずかな健康上の利点を多くの消費者が考慮するかもしれません。

正しい選択とは?

グラスフェッドおよびオーガニックの肉および乳製品はいずれも、慣行農業で生産されたものより高価であり、オーガニックの方がグラスフェッドよりもわずかに高いです。

しかしながら、家畜を草やオーガニック試料のみで育てる場合、慣行農業の方法と比較すると、コストもかかり、またより広い農地が必要となるからです。
オーガニックおよびグラスフェッド農法はいずれも労働力の集約的な管理が必要であり、人件費が余分にかかり、経済規模を狭めることとなり、 消費者はこれらの配慮に対して支払いをしています。また、ニッチな製品には、より高いバリューチェーンコストもかかります。しかし、需要が高いことはコストにおいて重要な要素であり、小売業者は利益率の設定を柔軟に行えます。

グラスフェッドとオーガニック畜産物はいずれも健康、環境、そして倫理的利益を有します。現時点では、オーガニックは明確な定義および規制基準があると言う点で優れている一方、グラスフェッドはカナダでは未だ規制された定義および基準はありません。オーガニックおよびグラスフェッド生産の組み合わせを業界は目指しており、消費費者が安心して購入できることを目標としています。

(Cecilia Stuart 2018)

ABOUT ME
The Organic Council of Ontario
カナダのオンタリオ州にあるオーガニックに関する地方議会です。オーガニックの食品を有機農園から食卓に運ぶ1000以上のオーガニック認証事業者、ビジネス、組織、個人を代表しています。オーガニック部門の成長、研究の支援、トレーニングの改善、データ収集の増加、市場成長を促し、有機農業の利点や必須条件などを広める活動をしています。

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